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『牧場の牛』

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コンスタン・トロワイヨン「牧場の牛」



あるところに一頭の牛が居ました。
 牛は外敵の居ない平穏な牧場で日がな草を食んで暮らしており、自分はこうして一生を過ごすものなのだと納得して毎日を過ごしていました。そこには、不満や疑問の心は有りませんでした。
しかしある日、そうして暮らす牛の前にふらりと、輝くお姫様が訪れたのです。お姫様は、自分の住む牧場しか知らない牛とは違い、冒険が好きで何でも知っていて、心優しく、そして美しかったのです。牛はすっかりお姫様に惚れ込んでしまい、牛とそしてお姫様は思いを伝え合いました。

 それからしばらくして突然、お姫様は、「私もう帰らなくちゃ」といって自分の住む国へと帰って行きました。その国は牧場から遠く離れており、お姫様はそこの堅牢な城に住んでいました。ここから会いに行くためには生半可ではない障害を突破しなければなりません。それでも牛はお姫様会いたさに牧場での暮らしに見切りを付け、お姫様の住む城へと歩み始めます。そうして何日、何ヶ月と旅を続ける内に、牧場では経験したことのない数々の出来事が牛の体を、お姫様に釣り合うために人の姿へと近付けて行きました。

 いざお姫様の城を望めるところまで辿り着いた牛を待ち構えていたのは、地に広がる無数の兵たちからの矢の雨でした。牛の体には沢山の矢が突き刺さりますが、お姫様の気持ちをその目で確かめるために牛は前へ進み続けます。常人ならとうに倒れているはずの怪我でしたが牛は一向に速さを落としません。この頃から牛は人でも牛でもない不死の怪物になりました。

 全身が針山のようになりながらも、城門が見えるような距離まで牛は歩み続けました。もはや耳も塞がってしまい、ものは聞こえずただひたすら前へ進む牛を、城門から出て来たお姫様が待っていました。お姫様は曇り無く輝く大剣を牛の脳天に突き刺し、その時ようやく牛はお姫様のことを知りました。あの日一緒に帰っていった王子様のこと、矢を放ったお姫様の気持ち。全てを知った牛は背を向け、自分が元いた牧場へ帰って行きました。

 そうして牧場に帰ってから時は経ち、変化した牛の体も落ち着きを取り戻して、牧場で過ごしていた頃の牛の姿になりました。かつてと変わらない暮らしをするさなか、旅をして多くを学んだ牛は日々、自らの幸せについて考えるようになりました。外の世界への脱走は幸福だったのだろうか、一頭の雄牛として立派に育ち、いずれ人に食べられることは不幸だろうか。牛の選んだ答えは、自らを高め、来たるべき出荷の日に備えることでした。幸せは誰かから得られるものではなく、自らが満足することによって得られるものだと気付いたからです。一頭の牛の大脱走劇はそこで真の終わりを迎え、いつかにおろされ誰かに食べられました。
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by usibeef | 2011-09-17 18:47 | 夢日記 | Comments(0)
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